こんにちは!前回に続いて、KMGBF(昆明・モントリオール生物多様性枠組)の具体的な行動目標についてご紹介します。
KMGBFのビジョン・ミッションについては以下をご覧ください↓


KMGBFでは、全部で23の行動目標(ターゲット)が定められており、3つの柱に分かれています。今回はその中から、「生物多様性の恩恵を享受し続けるために」設定された5つのアクションを取り上げます。
それぞれのアクションについての詳細は以下をご覧ください↓



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ターゲット9:野生種の利用をサステナブルに。

山菜や魚、薬草など、野生の生きものからの恵みは、私たちの暮らしに深く根ざした大切な資源です。こうした生物資源の利用は、食文化や伝統的な知識とも結びつき、人々の暮らしと地域の経済を支えてきました。
しかし、近年では過剰な採取や密猟などによって、多くの野生種が絶滅の危機にさらされています。このターゲットでは、野生生物の利用を科学的根拠に基づいて管理しつつ、地域文化や伝統的慣習との調和も図りながら、生物多様性の持続可能な利用を進めることが目指されています。特に、生物多様性に強く依存している人々や脆弱な立場にある人々が、公正に社会的・経済的・環境的な恩恵を得られるようにすることが重要とされています。

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ターゲット10:農林水産業をサステナブルに。

農業、林業、水産業は、私たちの食や暮らしを支える基盤であり、生物多様性と深く関わっています。しかし、過度な開発や化学物質の使用、単一作物への依存などによって、自然の生態系に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
このターゲットでは、農地や森林、海洋資源の利用を自然と調和した方法に転換し、生物多様性を守りながら持続的に生産できる仕組みを広げていくことが求められています。有機農業・有機水産、再生型農業、持続可能な集約化、アグロエコロジー(生態学的・社会的な考え方や原則を活かして農業や食料システムを設計・管理するアプローチ)などを活用しながら、“やさしい農林水産業”を推進していくことが、ネイチャーポジティブな未来への鍵となります。

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ターゲット11:自然の恵みを取り戻そう。

私たちは、目に見えないところでも自然の恵みに支えられています。たとえば空気や水の浄化、気候の安定、健全な土壌、花粉を運ぶ昆虫たち、自然災害からの防護など、自然の働きは私たちの暮らしと健康に欠かせません
このターゲットでは、こうした「自然の寄与」と呼ばれる調整機能を回復・維持・強化することを目指しています。森林や都市の緑地を増やしたり、土壌の健全性を高める農法を導入したりといった、生態系を活用した取り組みが大切です。
自然の調整機能は、生物多様性の劣化とともに失われつつあり、生活の安心や心身の健康にも影響を及ぼしています。だからこそ、自然の働きに目を向け、それを見える化しながら回復につなげていくことが、これからの社会の健やかさを支えるカギになるのです。

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ターゲット12:水と緑あふれる街づくりを。

街中の公園や川辺の緑地。そんな自然とふれあえる空間は、心と体の健康を育み、生きものたちにとっても大切な居場所になります。
このターゲットでは、都市や人口の多い地域で、緑地や親水空間(川や池、水辺の空間)を増やし、その面積・質・つながり・アクセスのすべてを高めていくことが求められています。単に木を植えるだけでなく、在来種を使った多様な緑づくりや、他の緑地と連携した配置など、自然とつながる都市デザインがポイントです。
こうした取り組みは、生物多様性の保全だけでなく、人の健康やウェルビーイングにも深くつながっています。自然と調和した都市のあり方は、だれもが心地よく暮らせる未来への一歩になります。

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ターゲット13:遺伝資源の利益を、適切に分けよう。

遺伝資源とは、植物や動物、微生物がもつDNAなどの情報のこと。薬や作物の開発など、多くの分野で利用されるこの資源は、世界中の自然から得られ、広く利用されています。
 このターゲットでは、そうした遺伝資源やそのデジタル情報、伝統的知識を利用して得られた利益を、きちんと関係者に分配する仕組み(ABS=アクセスと利益配分)を強化することを目指しています。特に、途上国や先住民など、資源や知識を提供する側がその恩恵を受けられるようにすることが重要です。

遺伝資源の情報(たとえばDNAの配列)だけを使う場合も、利益を公平に分け合うことが今後の国際ルールとなっていきます。技術の進展に合わせた新しいルールづくりと、その実施が求められています。

まとめ:国際目標に“わたしたちの行動”で関わる(続き)

KMGBFで掲げられた23のターゲットは、日々の暮らしや地域での選択とつながっています。ターゲット9〜13に対して、私たちが関われる身近な行動の例をいくつかご紹介します。

・地元の山や川で、植物やキノコを採取する際に、採りすぎや希少種への配慮を意識する(ターゲット9)
・学校や地域の農園で、有機農法や伝統的な栽培方法を取り入れる工夫をする(ターゲット10)
・まちの公園で、地域の在来種を植えたり、生物多様性を豊かにする公園整備に参加する(ターゲット11)
・高齢者や子どもが安心して自然にふれられる場所(緑の広場や自然観察会など)をつくる(ターゲット12)←自然観察指導員の皆さんぜひ!
・自然のなかで得られる「癒し」や「学び」を地域の中で語り合い、共有する(ターゲット12)
・大雨のあとの流れを見ながら、川沿いの植生や湿地の役割について学ぶ(ターゲット13)
・地域で干潟や森林を守る活動に加わり、自然の力を借りて気候変動へ備える(ターゲット13)


こうした一歩一歩が、世界の目標の実現につながっていきます。 「ネイチャーポジティブ」を地域から、暮らしから育てていきましょう。みなさんが取り組んでみたいアクションや、すでに取り組んでいるアクションがあればぜひコメントでシェアしてください!

次回は行動目標の最後の柱、「生物多様性の保全を当たり前にするために。」に注目していきます👀お楽しみに!🌟