こんにちは!前回はKMGBF(昆明・モントリオール生物多様性枠組)のビジョン・ミッションという大きな枠について話しましたが、今回はいよいよ具体的な行動目標についてご紹介します!2030年に「自然と共生する」目標を実現するための具体的なアクションにも注目です。

KMGBFのビジョン・ミッションについては以下をご覧ください↓


KMGBFでは、全部で23の行動目標(ターゲット)が定められており、3つの柱に分かれています。今回はその中から、「生物多様性への脅威を削減するため」の8つのアクションを取り上げます。
それぞれのアクションについての詳細は以下をご覧ください↓

それでは早速、8つのアクションをご紹介します!

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アクション1:それぞれの地域に合った計画と管理を。

自然を守るには、「私たちの住む土地や海をどう使うか?」を考えることから始まります。国土のすべての場所で、生物多様性に配慮した空間計画を行い、適切に管理していくことがこの目標の核です。
特に大事なのは、生物多様性にとって重要な地域――たとえば、手付かずの自然が残る地域など――の損失をゼロに近づけること。そのためには、地域の人たちが主体となって空間の使い方を話し合い、参加型でルールを決めていくことが求められています。

参考事例: 日本各地で策定されている「生物多様性地域戦略」では、地域ごとの課題に応じた空間計画が進められています。たとえば愛知県では、流域や文化圏をもとにエリアを分け、生態系ネットワークの再生に取り組んでいます。
👉 愛知県の取り組み



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アクション2:生態系を回復しよう。

次に注目すべきは、生態系の「回復」です。世界中で森や湿地、海辺の自然が劣化してしまっています。これを放置すれば、生きものの暮らしも、私たちの未来も危うくなります。
そこでKMGBFは、2030年までに、劣化した地域の少なくとも30%を回復傾向に持っていくことを目指しています。土地や水辺の復元は時間がかかるもの。だからこそ、今からしっかりと、本来の自然に近い状態を保ちつつ、生きものたちが生息地と生息地のあいだを妨げられることなく移動できるような形で取り組むことが大切です。

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アクション3:陸と海を守ろう。

「保護地域」と聞くと、遠い山の中の話に思えるかもしれませんが、都市公園や里山のように私たちの暮らしのすぐそばにある自然も大切な保全対象です。
KMGBFは、陸域・海域ともに30%を「効果的に」保全することを目標にしています。数字だけでなく、その質も問われるのがポイント。地域住民や先住民族の知恵を活かしながら、多様な主体による持続可能な保全が求められています。

日本の動き: 環境省は、既存の国立・国定公園に加え、民間や自治体による「自然共生サイト」をOECM(その他の効果的な保全手法)として国際的に登録する取組を進めています。
👉 自然共生サイトについて


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アクション4:種を絶滅から守ろう。

生きものたちの絶滅は、もはや“遠い未来の話”ではありません。現在、絶滅のスピードは自然の100~1000倍といわれ、人間活動が大きな影響を与えています。
この目標では、特に絶滅危惧種を中心に絶滅を食い止め、種の多様性を守り、必要に応じて繁殖・移植・生息地の再生なども行います。また、野生動物とのトラブルを防ぐため、人と動物の暮らしの境界線をどう整えるかも重要なテーマです。

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アクション5:野生種の乱獲をやめよう。

野生動植物の利用は、私たちの暮らしと深く結びついています。しかし、過剰な採取や違法取引は、自然や他の種に深刻な影響を与えています。
そこで目指すのは、「持続可能・安全・合法」な利用。生態系に負荷をかけない形での収穫や取引を進め、また病原体などのリスクにも配慮する必要があります。買う側・使う側の私たちも意識を変えていくことが求められています。

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アクション6:外来種の定着を防ごう。

次にご紹介するのは、外来種の問題です。海外から持ち込まれた動植物が、日本の在来種を駆逐してしまう――そんなケースが各地で起きています。
目標は、外来種の導入や定着を50%減らすこと。そのために、導入経路を特定し、早期に対処し、すでに定着した外来種についても根絶・管理を進めていく必要があります。

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アクション7:汚染を減らそう。

プラスチックごみ、有害化学物質、農薬、栄養塩などの汚染は、川や海、大気、土壌を通じて生きものの命に深刻な影響を与えます。
 このアクションでは、自然の中に流れ出す汚染物質を減らし、生態系を守ることが求められています。汚染の種類によっては少量で大きい影響を持つものもあり、量ではなくリスクや影響という視点で考えることが必要です。

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アクション8:生物多様性と気候変動を統合的に解決しよう。

温暖化による気温・海面の上昇、異常気象、干ばつなどは、生きものやそのすみかにとって大きな脅威です。
このアクションでは、自然に根差した解決策(Nature-based Solutions) などを通して、自然を守る取り組みの中に気候変動への「備え」や「回復力」を組み込むことが目指されています。


まとめ:国際目標に“わたしたちの行動”で関わる

KMGBFで掲げられた8つのアクションは、決して遠い世界の話ではありません。私たち一人ひとりの暮らしや地域での関わりが、地球規模の生物多様性の回復に直接つながっています。ここでは、身近な行動の例と、それが貢献するアクションをいくつかご紹介します。

・地元の自然再生活動や生物多様性戦略づくりに意見を届ける(アクション1,2,3)
・干潟再生や里山保全の活動に参加する(アクション2,3)
・自然観察アプリを活用して、見つけた野生動植物を記録する(私のおすすめはiNaturalist です!)(アクション1,4)
・「レッドリスト 」に載っている野生動植物の名前を知り、地元にどんな種がいるか調べてみる(アクション4)
・動植物を観察するときは、「取らずに撮る」! 採集せず、写真やスケッチで記録する(アクション5)
・地域でセイタカアワダチソウやウシガエルの駆除活動に参加する(アクション6)
・自宅の庭や学校で、在来植物を育てる取り組みを始めてみる(アクション6)
・家庭や学校で使う洗剤の種類と、その量に気を配る(アクション7)
・マイクロプラスチック対策として、使い捨てのプラスチックを減らす選択をする(アクション7)

こうしたアクションは一人では小さく感じるかもしれませんが、地域での取り組みが広がり、社会全体の変化につながります。私たち自身が“ネイチャーポジティブ”の担い手になることができます。
みなさんはどのアクションに取り組みますか?すでに実践しているアクションはありますか?ぜひコメントで教えてください!💬

次回は、アクションの2つ目の柱、「生物多様性の恩恵を享受し続けるために」に注目していきます。どうぞお楽しみに!🌟