こんにちは、IUCN-J会長の「キニナルニュース」、4月から投稿を始めました。ここでは、キニナルニュースの中から、なぜそれが注目に値するのか、少し掘り下げてご紹介していきます。
今回は、「欧州で過去最多の河川障害物を撤去」というニュース を取り上げたいと思います。
川の話、と聞くと、少し地味に感じるかもしれません。でも実は、これはとても奥が深く、私たちの暮らしにも関わってくる大切なテーマなんです。
川は、山から海へと水を運ぶ、生きた道です。その流れの中で、栄養や生物が循環し、多様な生態系を育みます。魚類の産卵、渡り鳥の休息、川辺の植物の育成など、自然のリズムは川の動きに支えられています。
一方で、人類にとっても川は大切な存在。飲み水、農業用水、工業用水の確保や、洪水対策、さらにはエネルギー源としての水力発電など、多方面で活用されてきました。その結果、世界中の川には無数のダムや堰がつくられ、流れが分断されてしまったのです。
しかし近年、欧米を中心に「ダムを撤去してみよう」という動きが広がっています。もちろんすべてのダムが悪いわけではありませんが、特に経済的にも役割を終えた構造物や、生態系への影響が大きい場所では、撤去が検討され始めています。
欧州連合(EU)は「EU生物多様性戦略」の中で、自由に流れる川を増やすことを目標に掲げています。今回のニュースは、その取り組みが着実に成果を上げていることを示すものです。2024年には、欧州各地で1,800以上の河川障害物が撤去され、過去最多を記録しました。
川を「元に戻す」ことは、自然へのリスペクトであると同時に、持続可能な社会の実現にもつながる選択なのです。
実は、日本でも「川じまい」という言葉が聞かれるようになってきました。人口が減少し、使われなくなったインフラが残されていく中で、「自然に返す」という発想はこれからますます重要になるかもしれません。
日本でのダム撤去の事例は、今のところ熊本県の荒瀬ダムのみですが、社会的・経済的な影響が少ない場所では、川本来の姿を取り戻す取り組みに目を向けることも必要ではないでしょうか。
欧州の事例は、単なる海外のニュースではなく、日本でも「川のあり方」を考えるきっかけになります。
私たちも、もっと川のことを気にしてみませんか?
以上、「キニナルニュースの気になるところ」でした。次回もどうぞお楽しみに!